まなびかふぇ　ひだまり～学習指導要領へん～

塾長。今日の小学生の高学年クラス、6時間目のあとで来た子がもうクタクタで、集中できないって言うから心配で。

昔と今って授業時間数が違うんですか？

そうだね。各科目で何時間授業をするかというのは、国が学習指導要領に基づいて決定しているんだ。それを標準授業時数というよ。
たとえば、小学1年生の国語の標準授業時数は、年間で306時間などと定められているんだ。

そうそう、その年間の標準授業時数をもとに毎日の時間割は決められているんだね。 大森直樹（2024）の『学校の時数をどうするか』では平日の1日の授業時数を算出しているよ。
1968年は、平日の1日の授業時数2年が4.4時間、4年が5.4時間、6年が5.8時間だった。
1968年といえば、まさに高度経済成長期のころだね。
1977年には、平日の1日の授業時数が4年、6年がともに5時間に。
2017年の時数では、2年、4年、6年ともに歴代最高の5.2時間、6時間、6時間になっているよ。

それは土曜日の時数が影響しているかもね。昔は5日制じゃなくて、 6日制で土曜日も学校に行っていたから。 平日の授業時数は1年間に受ける総授業時数から算出されるけれど、 1998年から実施されたゆとり教育では1年間の総授業時数は減少したんだ。 近年はゆとりからの転換もあって総授業時数はゆとり前の水準に戻されているよ。

ゆとり教育は、とにかく知識を教えまくる詰め込み 教育からの転換を示す方針だよ。 1977年の学習指導要領からその方針が示されたんだ。

学習指導要領は、全国どこの学校でも一定の水準が保てるよう、 文部科学省が定めている教育課程（カリキュラム）の基準のことだよ。だいたい10年ごとに改訂されるんだ。

そうだね。Z世代はデジタルネイティブ世代だけど、学習指導要領とは関係ないんだ。
（さっき「Zがあった」で納得した感じ出してたのが怖いな…）

下の表を見ると、どの世代がどの学習指導要領で教育を受けてきたかが分かるよ。
ぼくは、1980生まれだから、最初のゆとり教育が始まった世代だね。
佐々木さんは、平成1年だから、まさにゆとり世代。
山田くんは、ゆとりが終わってたしかな学力が求められた世代かな。

そうなんだ。昭和52（1977）年と平成1（1989）年の改訂は、論文などでは第一次ゆとりってよばれていたりもするよ。
ぼくらのときはゆとり方針といっても、入試などがあまりかわらなくて、
受験競争は激化してゆとりって印象はないかもね。しかも就職したら氷河期世代だし…。

そうだね。あれは「教育内容の3割削減」や「完全週休二日制」などの特徴があったから、実施前から批判にさらされることになったんだ（よくわかる教育課程p201）。
学力の低下が危惧されるという学力低下論争が起きた。当時発売された西村和雄氏の『分数のできない大学生』は大きな話題になったね。

ゆとり→詰め込みの流れはこれまでもあったんだ。
戦後間もない学校では子どもの生活経験を重視する経験学習というものがなされていた。
けれど基礎学力の低下が懸念され、昭和33（1958）年、昭和43（1968）年の学習指導要領では学問的な体系に基づいて知識を教え込む方針に変更される。
ところが今度はおちこぼれや学力格差が問題視されて、昭和52（1977）年にはゆとりの流れに変わったんだ。

たしかにそういう見方をする人もいるね
実際平成20（2008）年改訂の学習指導要領はゆとり教育の看板だった総合的な学習の時間が削減されて、小・中では国語や社会・算数などの主要教科を中心に授業時数は増加した。

総合的な学習は、批判を受けた平成10（1998）年の学習指導要領で初めて導入されたんだけど、これは各教科の枠をこえた授業をするという結構画期的なことだったんだ。
自ら課題を設定して主体的に課題の解決をはかる問題解決学習というやつだね。
ここでは各教科で得た知識や自分の経験を実際に使えるかどうかが大事になってる。

そうだね。でも、平成20（2008）年の学習指導要領では、この総合的な学習の時間で意図された「知識の活用力」を、総合的な学習の時間だけじゃなく各教科においても育成するという方針が示されている。

そうそう。だから、平成10（1998）年から平成20（2008）年の学習指導要領は、これまでのゆとり教育からの完全脱却というよりは、一部理念を継承しているとみたほうがいいんじゃないかな。
むしろこれまでの知識VS経験もしくは、詰め込みVSゆとり、系統学習VS問題解決学習のような対立構造で学習を考えないで、「両方大切だよね」という見方が正しいのかも。

今の学習指導要領のキーワードはコンピテンス（資質・能力の育成）とよばれているよ。
「思考力・判断力・表現力」や「主体的に学ぶ姿勢」が重視されてて…。
知識を持っているだけじゃなくてその知識を使えるかどうかが大事になってるよ。
プログラミングやアクティブラーニング、英語の早期化も特徴だね。